「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第39話

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環境整備編
<お子様ランチ>



 儀式魔法(偽)ショーの後、アルフィンは子供たちと戯れる時間を与えられる事無く本館の控え室へと通された。しかし彼女の顔には不満の色は無い。何故ならこれはあらかじめ決められていた事で、もしあの場にアルフィンが残ると子供たちの興奮が収まらず、食事場所である別館A棟に移動させるのが困難になると言うメルヴァの進言を受け入れたからである


 「それで、子供たちは全員別館へ移動したのね?」
 「はい。庭の魔法の明かりはすべて点灯しておいたので子供たちも暗闇を怖がるような事もなく、全員無事移動いたしました。この後は食事前に何組かに分けてお風呂に入ってもらい、その間に夕食の支度をする事になっております」

 控え室に着き、ソファーに座って一息ついてから控え室係兼今日の私付きのメイドになっているココミに確認すると、こう返事が返って来た。なので私は解ったと微笑み、頷くしぐさだけで返事をする

 今ココミから報告を受けた食事の前に子供たちにはお風呂に入ってもらうと言う予定だけど、実はこれ、予め決められていた流れ通りの行動だったりする。なので当然私は知っていたけど、ココミはあえて確認の為に私に聞かせてくれたみたいね

 先に食事にしてしまうとはしゃぎ疲れた子供たちは寝てしまうだろうし、そうなると折角お風呂を用意したのが無駄になってしまう。まぁ、無駄になる事自体は特に問題は無いのだけれど、村の子達があったかいお風呂に入る事ができる機会は殆ど無いと思うのよ。だからこれは、折角その機会を作れるのならなるべく入る事ができるようにしてあげようと考えた末の配慮なのね

 それに食事を用意するにしてもショーが終わって興奮している子供たちが相手では、別館まで辿り着くのにどれくらいの時間を要するか正直予想ができない。そんな状況では、あらかじめ作っておいてもし予想以上に移動に時間が掛かってしまったら折角の料理が冷めてしまうし、別館に着いてから用意した方が暖かいうちに子供たちに届けられるのでこうした方がいいだろうと言う話になった訳だ

 「では、私もみんなの前に出る前にお風呂に入ってくるかな。準備はできているよね?」
 「はいっ! そう仰られると思いまして、すでに御用意できております。案内しますのでこちらへどうぞ」

 確認をすると、ちゃんと用意されていたようで本館の大浴場まで案内をしてくれるそうだ。こう言う所に関しては、うちのメイド達は何も指示しておかなくてもちゃんと気が付いて予め用意してくれるから助かるわ

 ソファーから立ち上がり、扉の近くまで歩いて行く。するとココミが控え室の扉を開け、その扉が閉まらないように外に控えていたメイドがフックをかけたのを確認してから二人そろって扉の横に立ち、私に対して恭しく頭を下げた。それを確認してから私も廊下へ・・・出ようとしたらとんでもない勢いのまるんの声が<メッセージ/伝言>によって私の頭の中に飛び込んできた

 「あるさん、大変! 大変なの!」
 「えっ!? まるん、一体どうしたの? 何か緊急事態!?」

 まるんの余りに慌てた口ぶりに余程の事が起こったのだと悟り、緊張と悪い予感を伴って私の胸がドキッと鳴り、それと同時にサァーっと顔の血の気が引く。そんな私の青ざめた表情を見てココミが慌て出したのだけど、私にはそれに構ってあげる余裕は無かった

 だって今頃は確か、まるんはユーリアちゃんとエルマちゃんを含む村の女の子達を連れて最初にお風呂に入っているはずなのだ。と言う事はお風呂場で何か起こったと言う事よね? まさか濡れた床のタイルで足を滑らせて頭を打った子が出たとか!? それとも、まるんが付いているから流石にないだろうけど油断していたけど、うっかり目を離している隙に溺れた子が出たとか!? もしそうなら大変だ、今日ここに居るメイド達は子供達のお世話をする一般メイド以外はクリエイトマジックを儀式っぽく見せる為に連れてきた幻惑魔法を使える魔力系マジックキャスターと騎士団である前衛職のヨウコだけ。そしてメルヴァとセルニアも魔力系マジックキャスター・・・そう、回復魔法を使えるのは私しかいないのだから

 「うん、緊急事態! とにかく大変なの」
 「お風呂場で怪我人が出たのね。解ったわ。すぐ行くからメイドに応急手当をするように手配をしておいて。いえ、もし怪我が酷いようなら、まるんがその子を私の所に運んでくれた方がいいわね」

 まるんの返事に悪い予感が当たってしまった事を確信し、大慌てでまるんに指示を出す。もし頭を打っていたら、一刻を争う事態なのかもしれないのだから

 「えっ? 何を言ってるのあるさん。怪我人なんていないよ?」
 「・・・へっ?」

 ところが、ここに怪我をした子を運んだらすぐに寝かせる事ができるようココミに指示を出そうとしていた私に、まるんの気の抜けた声が届いた。ん? 怪我人が居ないってどう言う事? だって、緊急事態って

 「緊急事態ってのはねぇ、別に怪我人が出たと言う話じゃないんだよ」
 「そうなの? 大怪我をした子が出た訳じゃないのね! あぁ〜よかったぁ〜」

 まるんの言葉で体に入っていた力が一気に抜けて、ついつい床にへたり込んでしまった。はぁ〜驚かせないでよもぉ〜、正直心臓が止まるかと思ったわよ。まったく、緊急事態なんて言うから本当にびっくりしたじゃない

 「ああ、私がヒーラーのあるさんに緊急事態って言ったから勘違いしちゃったのかぁ。ごめんねぇ」
 「ふぅ。   いいわよ、誰も怪我人が居ないのならそれで。何よりそれが一番なんだからね」

 ちょっと涙目になってしまったけど、それは怪我人が出たのではないと聞いてほっとしたからだし、子供たちに何事か起こったのでなければそれでいいわ

 「でも、それなら緊急事態ってなんなの?」
 「あのねぇ」

 まるんが言うには、村の子達はお風呂に入った事など今まで一度も無かったらしい。と言う訳で、最初はおっかなびっくりだったらしいけど、あらかじめ少し温めに焚いておいたお風呂に入るとみんな気に入ってくれたらしいわ。そして私もきっとやるだろうなぁとは思ったけど、案の定子供達はお風呂で泳いだりはしゃいだりしてずっと湯船に浸かっていたんだって。そんな周りの子達をまるんが誰も怪我をしないようにとずっと見守っていたらしいんだけど、その時にある事に気が付いて「これは大変だ!」と慌てて私に連絡をして来たらしいわ

 それでその大変な事と言うのが何かと言うと

 「お風呂のお湯が真っ黒に?」
 「うん、それどころかお風呂の底に砂とかも沈んでるの」

 お湯に浸かる前に体を洗うなんて事をはじめてお風呂に入る子達が考えるわけもなく、そのまま湯船に浸かってお湯が真っ黒になってしまったそうなのよね

 う〜ん、これはうっかりしていたわ。言われてみれば当然の話で、水は川まで行かないと無いのだから水浴びさえ普段は余りしていない子供達をお湯につけたら一発でお湯が汚れてしまうのは当たり前だ。それに子供は新陳代謝が激しいから普通にお風呂に入ってもお湯の汚れは大人より早くなるのを忘れていた。いくらお湯が常に供給される掛け流し形式のお風呂だとしても、それでは一組入っただけですっかり汚れてしまう事だろう

 「それでは一度お湯を抜いて湯船を洗って沸かしなおしてからじゃないと、次の子達は入れないわね」
 「うん。汚れもそうだけど、砂もいっぱい沈んでるからね」

 となると確かに緊急事態だ。まだ村の子達(男子)と野盗の子供達(男子と女子)が居るから、入るたびにお湯を抜いて掃除をしてとなると夕食が遅くなりすぎてしまう。かと言って本館のお風呂は別館から少し離れているから使えないのよね。流石にお風呂に入ってからあの距離を歩かせるのはかわいそうだ

 「ココミ、別館の配置ってどうなっていたかしら?」
 「っ、はい。野盗の家族達が住む特別棟 A棟、B棟、C棟、来客棟の並びになっております」

 ん? なんか今一瞬ココミがビクッっと何かに反応したような? まぁ、普通に返事をしたし、見たところおかしな所は無いから気にする事は無いかな? そこはスルーしてお風呂問題を考えると、特別棟にはお風呂が無いしC棟はちょっと遠くなるからB棟のお風呂しか使えないか

 「解ったわ。ココミ、悪いけど急いで別館B棟まで出向いて常駐させているメイド達に今からお風呂を沸かして子供達を受け入れられるように準備をしてと頼んできて。そしてその後、まるん達がお風呂から出てきたらすぐに掃除してお湯を張りなおすようにとA棟のメイドたちへの連絡もお願いね。こうすれば交互にお風呂が使えるでしょ」
 「っ!? しかし、アルフィン様! 私にはアルフィン様の御入浴を御手伝いすると言う御役目が・・・」

 そう言うと、急にオロオロし始めるココミ
 いやいや、子供じゃないんだし、お風呂くらい一人で入れるから大丈夫なんだけど

 「そうだ! この館のメイドに申し付けてまいりますので、」
 「ココミ、お風呂くらい私一人で入れるから急いで行って来なさい。本館のメイド達は城で作った料理をA棟に運んだりして忙しいんだから」
 「・・・はい、承りました」

 何がそんなに落ち込む事があるのか? と言いたくなる程、がっくりと肩を落として扉から出て行くココミ
 どうしてそんなに気落ちしているのか解らないけど、彼女はよく気が付く優秀な子だし任せておけば大丈夫だろう。と言う事で私は一人、鼻歌交じりでお風呂に向かった


 ■


 幸い先ほどの儀式魔法(偽)ショーとその前の立食会で村の子達と野盗の子達が仲良くなってくれていたのでB棟のお風呂に男の子達を両組とも一度に入れる事ができ、A棟のお風呂も本館に居るお掃除スライムをこっそり投入する事で掃除の時間を短縮。その掃除が終わるまでにC棟のお風呂でお湯を沸かしておき、A棟のお風呂の掃除が終わったと同時にその二箇所をゲートでつないで流体制御の魔法が使えるメイド総出でお湯を移動させると言う力技で何とか乗り切った

 ただ、男の子達の入浴時には危険防止の為とヨウコが見張りについたんだけど(シャイナが「私がやる!」と言い張ったけど、なんか顔が怖かったから却下して置いた。まぁ、変わりに残りの女の子たちとは一緒に入ったらしいけどね)それが少し恥ずかしかったらしくて、まるんから聞いた女の子達ほどはしゃぐ事は無かったらしい。これを聞いて「やはりギャリソンを連れてくるべきだったなぁ」と少し反省。いくら子供とは言え、綺麗なお姉さんがお風呂場で見ていたら恥ずかしいよね



 全員が入浴を済ませた後、ココミの案内で子供達は食堂へ通された。そこにはいくつかの長机が置かれていて、その上には白いテーブルクロスが掛けられていた。そしてその傍らには子供達の体の大きさによって不都合が起こる事が無く、誰でも食事が取りやすいようにと色々な高さの椅子が並べられており、食堂に入ってきた子供達は入り口に並んでいたメイドたちによってそれぞれの体型に合った席へと誘われた

 「シャイナ、良かったわね。みんなあなたの選んだ料理を見て嬉しそうよ」
 「良かったよ、みんな気に入ってくれたみたいで」

 子供達がテーブルに着き始めると同時にメイドが子供達の前に料理を運んできた。シャイナ厳選のお子様ランチである

 初めて見る料理ばかりが並んだそのランチプレートに子供達は皆目をキラキラ輝かせているんだけど、でもねぇ本当なら今すぐにでも食べさせてあげたいんだけど全員が席に着き、料理がみんな出揃うまではちょっと可哀想だけどお預けなのよね

 因みに私とシャイナは食堂の一番奥の壁際に置かれた机に座っており、まるんは私から見て向かって右側、窓際にある子供達と同じ長机の一番手前の席に座っていて、その横にはユーリアちゃんとエルマちゃんが座る予定だ。友達だから一緒に座るのが当たり前と言うまるんの言葉でこの席が決まったのだけど、その事についてシャイナは少し不満があるみたいね

 「あぁ、できる事なら私もまるんみたいに子供達に囲まれる席が良かったなぁ」
 「シャイナ、流石にそれはダメよ。本当なら私もそうしたいけど、立場と言うものがあるからね」

 流石にホストである私達がそのような席に着く事はできない。いや、もしかしたらできるのかも知れないけど、メルヴァが許してくれなかった。恐る恐る聞いたところ、例の目がまったく笑っていない満面の笑みで諌められてしまったのよ

 「アルフィン様、シャイナ様、御二人はイングウェンザーを代表してここに御越しになられている立場でございます。ですので、きちんとその様に振舞っていただきますよう、よろしくお願いいたします」

 ってね。ほんと統括モードに入ると容赦ないんだから。あの笑顔、怖いからやめてって言ってるんだけどなぁ。でも前にそう言ったら

 「あやめ様とアルフィス様から『アルフィンは一度甘えると楽な方に転がって行くから、締める所はちゃんと締めるようにお願いね』と仰せ付かっております」

 と言われてしまった。二人とも流石元私だ、よく解ってる・・・
 と言う訳で、あの笑顔が一番効果があると知られてしまってからは、こう言う公式な場面で私が我侭を言うとメルヴァは常にあの顔をするようになってしまったと言う訳なのよ。て言うか、あやめ辺りが入れ知恵している気がする。今度問い詰めるか

 あっそのメルヴァだけど、今この場には居ない。メルヴァとセルニアはホストとしてショーに参加した為、私達と同席すると同格と思われる可能性があるからこの場には出席しないんだってさ。相手は子供達だし別にいいと思うんだけどなぁ。こう言う所はしっかりしていると言うかきっちりしていると言うか

 「あの、アルフィン様、私達もご一緒のテーブルで宜しかったのでしょうか?」
 「カルロッテさんの言う通り、私達はこのような席ではなく、子供達の席に座った方がよかったのではないですか?」

 いつものごとく自分の思考の世界に旅立っていた私に、まずシャイナの隣に座っているカルロッテさんが声を掛けてきて、それに追随するように私の横に座るユーリアちゃん達のお母さんが同意する言葉を掛けてきた。うん、解る。どう考えても位が上の人と同席するのは緊張するし、できたら気が楽な方で食事したいだろうね。でもそう言う訳には行かないんだ

 「いえ、お二人はその席に居てもらわないと困ります。子供達に安心して食事を取ってもらおうと考えた場合、見ず知らずの、それも偉そうな二人だけが目の前に座って居ては緊張してしまうかもしれません。でも、お二人が同じ席に座っているのを見れば少しは安心するのではないかと思うのですよ」

 そう、この二人に私達と同席して貰っているのはそう言う理由なのよ。だからカルロッテさんの前には野盗の子供達が座っているし、ユーリアちゃんのお母さんの前にはボウドアの村の子供達(と、まるん)が座っている。それに子供達と私達大人はメニューが構成は同じだとしても流石に量まで同じと言う訳にも行かないから、私達の分だけはワンプレートにまとめた物ではなくコースのお皿に分けてメイドたちが運んでくる段取りになっているのよね。その配膳工程を考えて見てもこの二人には同じテーブルについてもらった方が何かと都合がいいのだ

 「あっでも、私達と同席なんて息が詰まるでしょうけど、そこは許してくださいね」
 「「いえ、その様な事は」」

 と言う訳で、ダメ押しにこの一言を加えて二人には私達と同席する事を了承させた。うん、これでもういいわね。二人の返事を確認したので、給仕を取り仕切っているココミに目で合図を送る。すると、私の話を遮らないようにと静かに後ろに控えていたメイド達が私達の前にも料理の皿を出し始めた

 そして、そのような会話をしている間にも準備は進められており、私達の皿が出揃う頃には子供達の前にもお子様ランチが並べら終えられて食事会の準備はすべて完了

 「準備が整いました。お願いします」
 「解ったわ、ありがとう」

 ココミ以外のメイド達は邪魔にならないよう扉近くに並んで控え、それを確認した彼女からの報告を受けて私は食事会開始のスピーチをする為に立ち上がる。それに呼応して一斉に子供達の視線が私に・・・集まるなんて事は無く、会場を見渡すと子供達は早く食べたくてたまらないと言う表情で目の前のお子様ランチを凝視していて誰もこちらの事など見もしないのよね。この状況には流石にシャイナと視線を合わせて苦笑する

 「ウフフ、ギャリソンとメルヴァが居なくてよかったわ」
 「そうだね、彼らなら『皆さん、アルフィン様から御話がございます。注目するように!』なんて、子供達を叱りそうだからね」

 いやいや、いくらなんでも流石にそんな事はしないだろうけど、顔をしかめるくらいはしたかもね。でもそうなったらきっとカルロッテさんたちは萎縮しただろうし、今ここに居ないのはやはり良かったと言えるわね

 さて、こんな状況でいつまでもお預け状態にしておくのは流石に可哀想だし、本当はメルヴァに食事前のスピーチをするようにと言われていたけど、そんな物などすっ飛ばしてみんなにもう食べていいよと伝える事にする。・・・後で怒られるかもだけど、仕方ないよね

 「みんな、料理は目の前にあるわね。それじゃあ、食事を始めましょう」
 「「「は〜い!」」」
 
 私の言葉を合図に、みんなお待ちかねのお食事会は始まった

 さて、ココミが残す子が続出するのでは? と心配していたシャイナ厳選の夕食会だけど、昼間あれだけのお菓子を食べたにも拘らず手をつけない子が出てくるなんて事は無く、みんな凄い勢いで食べ進めて殆どの子が完食してしまった。それどころか一部の子達はおかわりまでするほどの大盛況でちょっとびっくり。正直私は子供達がこんなに食べるとはまったく思ってなかったわよ。まぁ、間にショーやお風呂の時間があって立食から3時間近く経っているし、あれだけ大騒ぎをすればお腹も空くと言う事なんだろうね。

 そんな子供達を見ながらニコニコしていたら、カルロッテさんが隣に居るシャイナに子供達の方を見て恐る恐る何かを尋ね始めた。あっ、これは別に彼女がシャイナを怖がっていると言う訳ではなく、何度か顔を合わせている私と違ってほとんど面識がないからなんだと思う。で、意識をそちらに向けた所、その質問の内容は料理についてだった

 「シャイナ様。私どもが食べているコース料理は形式こそ違いますが内容は子供達と同じものですよね? 初めて見るのですが、これは何と言うお料理なのですか?」
 「ああ、これは私が子供達の為にメニューを考えたお子様ランチですよ。私達は同じメニューを少し量を増やして各料理をお皿に分けてコースとして出してもらっているけど、本来は子供達が食べているように一皿にまとめて出す料理なんです」

 そう言えばカルロッテさんたちは面会所で軽食は食べた事があるけど、うちの本格的な料理を食べるのはこれが初めてなんだっけ。名前を聞いて納得したのか、彼女は初めて見る料理をフォークとナイフを器用に使って綺麗に、しかし少しおっかなびっくりな表情で口に運んでる。でも、その表情は一つ口に入れるたびに幸せそうなものに変わっているからきっと気に入ってもらえているんじゃないかな?

 因みにシャイナがそろえたお子様ランチのメニューだけど、4つに区分けされた丸いランチプレートの上にはA7牛の赤身肉と霜降り肉とをあわせて挽いて作った小さめのハンバーグと極楽鳥のフライドチキン、オーロラシュリンプのエビフライをメインとして手前半分をほぼ占領した大きなくぼみに目を引くように配置し、そしてトマトケチャップを掛けられたコーンと枝豆のかき揚とフライドポテト、そして少しの野菜を左奥のくぼみに置き、そして最後にあいた右奥のくぼみには”誓いの金槌”の紋章の書かれた旗が刺さっているデミグラスソースのオムライスとタコの形に作られたソーセージが配置されている。そしてお皿のど真ん中に丸く作られたくぼみにあるのは、ある意味お子様ランチのメインとも言えるメニュー、上にホイップクリームとサクランボが乗せられたあま〜いプリンがゆれていた。また、そのプレートの横にはマグカップが置かれており、そこには少し甘めに作られたコーンスープが入れられている

 これにジュースがつけば完璧なんだろうけど、ここまででかなりの甘い物を子供達に食べさせているので夕食はプリンもつく事だしやめておいた。普段の食事の時に果実水なんて飲む事は無いだろうし、食事の時くらいは普通にお茶を飲むべきだろうからね

 さて、食事会もしばらく時間が経つと、子供達の中には流石にもう眠たくなった子も出てきたみたいで食べながらウトウトする子がちらほらと見受けられるようになってきた。実はこっそり、立食会の時のお菓子やショーの最中に子供達の前に置いたオレンジジュースにHP回復系のバフを付けて貰っていたんだけど、流石にこの時間まで起きているにはその効果だけでは体力が持たなかったと言う事かな

 「(流石に電池切れの子が出てくるか) ココミ、眠そうな子が居るみたいだから対処をお願い」
 「はい、アルフィン様」


 私の指示を受け、ウトウトし始めた子達を見つけると順次メイドたちが先に寝てしまった子達用の部屋にに連れて行っていた。これは寝た子が居る部屋に後で起きている子を送り込むと起こしてしまう可能性があるからで、もし起きてしまって不安にならないよう、その部屋には子供受けよさそうなセルニアに<リング・オブ・サステナンス/疲労無効の指輪>を装備させて配置してある。万が一子供達が起きてしまった時に不安がらないよう、彼女には今日は寝ずの番をしてもらう事になっているわ

 やがてその他の子達も全員がお子様ランチを食べ終わり

 「みんな、もう食べ終わったかな? それでは後ろにいるお姉さんたちがみんなが今日寝る場所まで案内してくれるからついて行くってね。カルロッテさんたちもお願いします」
 「「はい」」

 今から行く子供達が寝る部屋ではボウドアの村の子達の部屋にはユーリアちゃん達のお母さんが、野盗の子供達の部屋ではカルロッテさんが一緒に寝てくれる事になっている。その方が子供達も安心して寝られるだろうからね

 「ねぇ、アルフィン。私もセルニアの部屋に行っちゃダメかな?」
 「ダメよ、私だって我慢してるんだから」

 寝た子がいる以上、起きているのは最低人数の方がいいだろう。それに私やシャイナだと、つい寝ている子達の顔を覗き込んだりして起してしまいそうだしね

 「折角気持ちよく寝ているのだから、邪魔はしちゃだめです」
 「うぅ、解った。我慢するよ」

 断腸の思いであきらめるシャイナと共に別館を出て、自分達が今日泊まる場所であり一人蚊帳の外で待たされているメルヴァが待つ本館へと帰るアルフィンだった

あとがきのような、言い訳のようなもの


 出張前の金曜日、いつものノルマである6000文字を超えた所まで書いたのですが、まるで終わる気配が無かったのであきらめて出張に行きました。で、出来上がった物の文字数はと言うと8000文字を軽く超えて9000文字近くになってしまいました。そりゃ終わる訳ないわなw

 と言う訳で、いつもより遅い月曜日更新になってしまいました。すみません

 さて、ココミがアルフィンのお風呂についていけなくてがっくり肩を落としていますが、これは別に彼女がレズだとか疚しい考えがあったからではないんですよ。彼女は一般メイドなのでアルフィンのお世話を任されるなんて栄誉を与えられるなんて事はほとんどありません。普段はメイド長(名前も設定も決まっているのでいつか出す予定)や各部署専属メイドが居るので。それなのに今回は控え室付きを任され、その上入浴のお手伝いなんて大役まで任されてとても張り切っていたのにこのような事になってがっくり来てしまいました

 オーバーロードで言う所の、休みの後のアインズ付きのお役目を他の用事ができたからと外されるような物だと言えば解って貰えるでしょうか?

 次に果実水のバフですが、ジルクニフも9巻で飲んでますよね。あれと似たようなものだと思ってください。ただ、本文を読んだ感じからするとあちらはHP回復ではなくストレングス増加かHP増加のバフっぽいですが

 まぁ、HP時間回復バフはよくあるので、オーバーロードの世界にもあるだろうと言う私の勝手な解釈で使った物なので、そんなものは原作には無いという突っ込みはご容赦を

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